こしだ会計事務所

免税事業者のインボイス制度対応 5分でスッキリ!インボイス制度のモヤモヤが晴れる簡単解説。

Not all of us can do great things. But we can do small things with great love. - Mother Teresa

 

すべての人が大きなことができる訳ではない。でも、大きな愛で小さなことを成し遂げることならできるはずです。- マザー・テレサ

 

こんにちは。もやもや悩み会計士の「こしだ」です。

 

インボイス制度がはじめる2023年10月まであと少しとなりました。

 

・インボイス登録したらどれくらい消費税を払わないといけないのかわからない

・インボイス制度自体がいまいちピンとこない

 

このような悩みを抱えている免税事業者のみなさんは、ぜひにこのブログを読んで、インボイス制度のモヤモヤを晴らして、

仕事をグイグイと前に進めていってください。

 

1.フリーランスなどの小規模なビジネスをしている人にとってのインボイス制度のインパクト

 

今まで税務署に消費税を支払っていなかった人=一年間の売上高が1千万円以下である小規模なビジネスをしている人にとっては、インボイス制度が始まると、

 

 

今までに比べて売上が減る可能性がある

 

 

というリスクがあります。

まあまあ、というか、かなりよろしくない状況です。

 

 

それでは、これから詳しく説明していきます。

 

 

2.インボイスとは

インボイスとは、「【決められたこと】が書かれた請求書」のことを言います。

 

【決められたこと】とは、

 

・請求する会社や個人事業主などの番号(インボイス登録番号) ➡後ほど説明します

・消費税の金額(8%10%のそれぞれの税率ごとに)

 

 

になります。

 

■インボイス事業者番号

国税庁のシステムに登録することによって「インボイス事業者番号」が割り当てられます。

 

この番号が無ければ、あなたに支払をしてくれた事業者であるお客さんが支払に含まれる消費税分を自分で負担しなければならないことになるので、この番号を取ることがとても重要になります。

 

そして、お客さんはあなたからの請求書にこの番号と消費税の金額が書かれていることを確認することによって消費税の計算を正しくできるようになります。

 

 

3.インボイス制度とは=税務署に支払う消費税を計算するルールの新しいバージョン

インボイス制度とは、この「決められたことが書かれた請求書」をベースとして、ビジネスをしている会社や個人事業主が税務署に支払う消費税の計算をする、という新しいルールのことです。

 

消費税の計算の仕方についてはこちらをどうぞ!

免税事業者がインボイス事業者になることを選んだ時の2割特例を簡単に解説

 

4.今まで税務署に消費税を支払っていなかった場合(免税事業者)にインボイス制度が始まるとどうなるか

 

あなたのビジネスの規模、具体的には1年間の売上高が1千万円以下であった場合は、下記のようなことが起こる可能性があります。

 

(1)お客さんから値下げを言われるかもしれない

今までお客さんからもらっていた売上高プラスの10%の消費税分を、インボイス制度が始まったらもらえなくなる可能性があります。

 

例えば、今までコンサルティングのサービスを月10万円+消費税1万円の合計11万円でお客さんに提供していたとします。

 

お客さんが消費税を税務署に支払っているある程度の規模のある会社(課税事業者)の場合は、インボイス制度が始まった後も今まで通りにあなたに11万円払うと、その会社は1万円損することとなってしまいます。

 

この理由については後ほど説明します。

 

※ただし、お客さんが簡易課税という消費税の計算方法を選んでいる場合は、お客さんは損をする恐れがないので、気にする必要はありません。

➡簡易課税についてはこちらで説明しています。

インボイス制度がはじまったらシンプルな簡易課税のほうが良いこともある

 

 

ということは、お客さんからすると、「今までと同じサービスならば消費税は払わなくて良いでしょ?」と言いたくなる誘惑があります。

 

もし本当にお客さんからそう言われたらどうしましょう?

 

また、お客さんからそのように言われなかったとしても、今までと同じ金額で黙って請求書を出し続けていると、インボイス制度が始まってしばらくするとお客さんからこう言われるかもしれません。

 

「あなたは消費税を税務署に払っていなかったのね?わたしの会社は払っているので、あなたに払った消費税分だけ損するのよ!」

 

(2)お客さんが他社に流れるかもしれない

想像したくないことかましれませんが、インボイス制度が始まると、お客さんからこう言われる可能性があります。

 

「もしあなたが税務署に消費税を支払っていない免税事業者ならば、今後は取引できません。」

 

もしくは、次のように言われるかもしれません。

 

 

 

(3)お客さんからインボイス登録事業者になるように言われるかもしれない

 

 

「インボイス登録事業者になってください。もし今まで通りに免税事業者を続けるならば、今後はうちとは取引できません。」

 

 

いずれにしても、あなたにとってはショックです。

 

なぜお客さんはこんなことを言ってくるのでしょうか?

 

 

5.インボイス制度が始まると、なぜ今のままではお客さんは損をするのか?【消費税の仕組み】

 

これをすっきり腹落ちさせるためには、最低限の消費税の仕組みについて知っておく必要があるので、すこしだけ我慢してお付き合いください。

 

 

(1)消費税の仕組み:間接税

これから例えを使って、消費税の仕組みをわかりやすく説明しょうと思います。

 

そして、この説明の中では、ビジネスの規模に関係なくすべての事業者が消費税を税務署に支払うという仮定でいきますので、そこは注意してください。

 

 

さて、

あなたが詩人で、詩をプライベートで楽しむ人に(ビジネスでないという意味で)、あなたの詩を税込み11万円で売った場合をイメージしてください。

 

詩を買った人から1万円の消費税をあなたは預かりました。この1回の取引以外は何も売らず、経費も全く掛かっていないならば、

 

あなたは税務署に1万円消費税を支払う必要があります。

これは、お客さんがあなたに消費税として支払った金額と同じです。

 

 

お客さんがあなたに支払った1万円=あなたが税務署に支払う1万円

 

 

 

このようにして国や税務署は、お客である消費者が支払った消費税をちゃんと確実に回収することができます。

 

 

では、ちょっとひとひねり入れます。

 

 

あなたが素晴らしい詩をひねり出すために、税込み1万1千円の赤ワインを買ったシーンを想像してください。酔いに任せての産みの苦しみを乗り越えようとしているようですね。

 

これ以外は前の仮定と全く同じ場合には、税務署に支払う消費税はこのようになります。

 

 

お客さんからもらった消費税 1万円

ワイン屋に支払った消費税  1千円

差引   9千円

 

先ほどの例と比べて、ワイン屋に支払った1千円分だけ、あなたが税務署に支払う消費税は減りました。

 

 

国や税務署はこのことをどうやって納得するのでしょう?

 

あなたのお客さんはあなたに1万円分の消費税を払ったのに。

 

 

その答えは、こうです。

 

ワイン屋が税務署に1千円を支払う。

 

 

すると、

 

あなたが支払う9千円+ワイン屋が支払う1千円=1万円

 

となり、

 

お客さんがあなたに支払った1万円=あなたが税務署に支払う9千円+ワイン屋が税務署に支払う1千円

 

 

となり、国や税務署としてはめでたしめでたしです。

 

 

つまり、国や税務署は、消費者が支払った消費税は確実に回収したいのです。

そして、それはすべての事業者が消費税を税務署に支払うことによって実現します。

 

 

ちなみに、

覚えておく必要は全くないのですが、このように税金を負担する人(ここでは消費者)と税金を税務署に支払う人(ここでは事業者)が異なるような税金を「間接税」と言います。

 

一方で、所得税は基本的にはお金を稼いだ人や事業者が税金を負担し、かつ、支払をするので、「直接税」と言います。

 

 

そして、消費税が間接税という仕組みであるために、いわゆる「益税」という言葉が出てくることになります。

 

お客さんから消費税を貰っているのに、税務署に消費税を支払っていないだから、得してるでしょ、という理屈です。

 

 

(2)「益税」的なものが無くなる分、誰かが損をする

 

そして、インボイス制度が始まることによって、いわゆるこの「益税」と言われるものが減るのは間違いありません。免税事業者が自ら課税事業者となることを選ぶケースが出てくるからです。

 

さらっとだけ触れますが、本当に「益」なのかどうかはケースによると思います。ただし、値段交渉がやり易いというメリットがあることは確実に言えると思います。

 

なぜなら、「値段は本体価格10万円プラス1万円の消費税です」と値段を伝えるのと、「値段は11万円です」と伝えるのなら、

 

前者のほうをお客さんが安いと感じるのは間違いないからです。

 

 

しかし、インボイス制度が始まると、免税事業者は今までと同じようには言えなくなってしまいます。

 

 

(3)インボイス制度が始めると

 

例えば、上記の例のワイン屋が税務署に消費税を支払っていない免税事業者であったとします。

 

すると、あなたが税務署に支払う消費税の計算はこのようになります。

 

お客さんからもらった消費税 1万円

✖ワイン屋に支払った消費税  0千円✖

差引   1万円

 

ワイン屋に支払った消費税相当額1千円を引けなくなるので、あなたの税務署に支払う消費税は1万円になり、今までと比べて1千円損をすることになってしまいます。

 

これと同様のことが、あなたのお客さんにも起こります。

 

お客さんは、今までと同じ金額であなたに支払をしたら損をするので、それを避けるためにあなたに値下げなどを言ってくる可能性があるのです。

 

ワイン屋への支払いの例だと、前は1万円1千円をあなたは支払っていましたが、インボイス制度が始まった後は、1万円しか払いたくなくなる、ということです。

 

 

6.ではどのように事前の対応するのか

 

 

(1)税務署に消費税を払うことを自ら選ぶ(インボイス登録事業者になる)

一つは、1年間の売上が1千万円を超えていないけれども、税務署に消費税を払うということを自ら選ぶということです。また、お客さんからそのお願いを受ける可能性も大いにあります。

 

もしこの方法を選ぶならば、これまでに書いたようにお客さんから消費税分の値下げの圧力を受けることは無くなります。お客さんが今まで通りで支払をしても損をしないからです。

 

 

 

「でも、消費税を税務署に支払ないといけなくなったら、わたしの利益は当然減るよね?」と思いますよね。そうです、その通りです。

 

課税事業者になることを自ら選んだ場合にどれだけ損をするか?

 

では、この場合の消費税のインパクトはどのように考えれば良いでしょうか?お客さんからもらった消費税の分の合計が、そのまま負担になる金額でしょうか?

 

実はそうではありません。

 

 

パソコンを買ったり、お客さんと食事に行ったりした時に支払った金額には消費税が含まれていますよね?ですので、税務署に支払う消費税を計算する際には、支払った経費に含まれる消費税分はお客さんからもらった消費税の分から差し引くことができます。

 

そして、差し引いた後の金額がプラスであれば税務署にその金額を消費税として支払う必要があるのです。

 

つまり、お客さんからもらった消費税分がそのまま追加の負担になるのではなく、ビジネスの経費としての支払に含まれている消費税を差し引いた額が、税務署に支払う消費税という新たな負担になるということです。

 

 

ただし、経費に含まれている支払った消費税がいくらかを確認する際には、気を付けないといけないことがあります。

 

それは、給与などの人件費や保険などの支払については消費税が含まれていないこと、また、今まさにここで話している税務署に消費税を払っていない事業者への支払についても、消費税が含まれていません。

 

ですので、「お客さんからもらった消費税」から「経費として支払った消費税」を差し引く計算をする時には、消費税が含まれていないこれらの支払については含めてはいけません。

 

 

そして、結論としては今までの値段のままではあなたのビジネスの利益は確実に減ってしまいます。

 

なぜなら、普通は税務署への消費税の支払いが必ず必要になるからです(そうでないなら、あなたのビジネスが赤字ということです)。

 

自ら税務署に消費税を払うと決めることにより利益が減るのを避けるためには、継続的な取引のあるお客さんについては、あなたのサービスの値段について話し合うことも一つの選択です。

 

なお、下記の経過措置が新たに付け加えられたので、是非にチェックしてみてください。

免税事業者がインボイス事業者になることを選んだ時の2割特例を簡単に解説

 

(2)税務署に消費税を払わないという今の形(免税事業者)を続ける

もう一つは、いままで通りに税務署に消費税を払わないことを続けるということです。

 

今までお伝えしたとおり、その場合は、消費税分についての値下げをお客さんから言われる可能性があります。

 

 

(3)いずれにしても値段についての話し合いが必要かもしれない

課税事業者になることを選んだ場合も、今まで通り免税で行くことを選んだ場合も、どちらにしてもあなたの利益は減る可能性が高いということが分かりました。

 

という事は、減ることを受け入れるか、もしくはそれができないならお客さんと値段について話し合いが必要になります。

 

 

例えば、「今まで税込みの金額で値付けをしていた」とお客さんに説明することは有効かもしれません。

 

今までの請求書の見え方としては本体価格10万円+消費税1万円となっているものの、あくまでも11万円という税込みの価格、お客さんから頂戴するキャッシュの額でビジネスを回すように考えていたので、

 

それを10万円しか払わないと言われてもこちらとしては少し困ってしまう、ということをお客さんに伝えるのです。

 

つまり、消費税分の1万円はけっして「益税」ではなく、税込みの金額でフェアな値段で仕事をさせて頂いていたという意味を伝えるのです。

 

 

経過措置を考慮するとお客さんは10%分損する訳ではない

 

また、お客さんと値段の話し合いをする際には、インボイス制度の急激なショックを緩めるための「経過措置」を考慮に入れるのも一つです。

 

■インボイス制度の経過措置

税務署へ支払う消費税の計算をする時に、税務署に消費税を支払っていない免税事業者への支払についてもインボイス制度が始まった後の最初の3年間は8%、その後の3年間は5%を、お客さんから預かった消費税から差し引けるというものです。

 

これを考慮に入れると、最初の3年間は2%程度の値下げを、その後の3年間は5%程度の値下げなら已む得ないものと考えるのもひとつです。

 

なお、インボイス登録事業者になることを選択した場合に必要な対応は下記で解説しています。

これだけ押さえておけば大丈夫!最小限のインボイス制度の対応ポイント

 

 

 

 

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